水産業
水産業は、魚介類をとる漁業を中心に養殖・加工、製塩などからなる。歴史は農牧業と同様に古く、沿岸での貝類の採取などから始まり、沖合や遠洋に漁場を広げ、漁獲物も多様になった。
第二次世界大戦後、漁船の大型化・新漁場の開発・加工技術の発達により、世界の漁獲高は飛躍的に増加した。とくに排他的経済水域(EEZ)の設定によって、資源ナショナリズムの高揚を背景に、漁業先進国(日本・ノルウエー・ロシア)以外の発展途上国(チリ・ペルー・インド・タイ・インドネシア・フィリピンなど)の漁獲高の増加に負うところが大きい。また、1985年頃から中国の漁獲高が急増して、世界の約2割を占めるにいたっている。
好漁場は、大陸棚やバンク、寒流と暖流の出あう潮境(しおざかい)付近の海域で、太平洋北西部、太平洋南東部(南アメリカのペルー・チリ沿岸)、大西洋北東部(北海を含み、アイスランドからポルトガル沖)、大西洋北西部が有名である。20世紀に開発された南氷洋捕鯨(ほげい)は、乱獲によるクジラの減少で、1946年に国際捕鯨条約が結ばれ、捕獲制限がきびしくなって、実際に捕鯨を行っている国は少ない。
乱獲による資源の枯渇と、排他的経済水域の設定によって、世界的に水産養殖(栽培漁業)への関心が高まってきた。しかし、多彩な海面養殖や内水面養殖が発達している日本を除き、比較的生産量が多いのは中国の淡水魚、韓国の蛤(はまぐり)・のり、東南アジアのミルクフィッシュ・エビ、アメリカ合衆国・フランス・スペインのカキ・イガイの養殖程度である。
水産加工には、塩干物・燻製(くんせい)・冷凍・缶詰の食品加工や、魚粉・魚油・魚肥の製造がある。前者は、漁獲物の食用化率が高い日本やアメリカ合衆国・カナダ・イギリスなどで盛んであるが、後者は食用化率の低いペルー・チリ・ノルウエー・デンマークで盛んである。
バンク(浅堆(せんたい))
大陸棚に多くみられるとくに水深の浅い部分である。一般にプランクトンが豊富で魚類の産卵・生育に適して好漁場となることが多い。
グランドバンク
北アメリカのニューファンドランド島南島沖合にある。タラ(コッド)の好漁場として知られる。
ジョージ(ズ)バンク
アメリカ合衆国ニューイングランド地方のコッド岬沖合のバンク。タラ(コッド)の好漁場として知られる。
ドッガーバンク
北海の中央部に位置するバンク。タラ・カレイなどの好漁場として知られる。その名称は「トロール船」を意味するオランダ語に由来する。
グレートフィッシャーバンク
ドッガーバンクの北、北海油田に隣接する浅堆である。タラ・ニシンなどの好漁場として知られる。
林業
森林は、世界の陸地面積の約3分の1に当たる41億ヘクタールを占め、広葉樹の熱帯雨林、広葉樹と針葉樹の混合林の温帯林、針葉樹が主体の冷帯林の3つの特色のある林相を示す。
森林は、洪水や土砂流出を防止する国土保全、水資源の涵養(かんよう)、保健休養の場を提供する。
林業の発達には、有用樹がまとまって多量に存在し、伐採・搬出の便がよく、労働力・開発資本に恵まれ、消費地への輸送機関が整備されていることが必要である。
熱帯雨林は、アマゾン川流域・カリブ海沿岸やコンゴ川流域・東南アジアの山地に分布し、常緑広葉の硬木が多い。面積は広く、蓄積量も豊富だが、多くの樹種が混在し、選択伐採に経費と手間がかかり、輸送設備の不備や労働力の不足、大市場に遠く開発が遅れていた。しかし、近年、温帯林の枯渇とともに、先進国の資本・技術が投入されて、インドネシア・マレーシアなどの木材輸出が増大している。
温帯林は、昔から農耕のために焼き払われ、用材・薪炭材として伐採され、天然林は少ない。とくにヨーロッパでは16〜17世紀に、製鉄用の木炭を多量に生産し、森林を荒廃させた。そこで、国家的な事業として植林し、イギリス・ドイツ・フランスでは森林面積が増加している。
冷帯林は、北半球のスカンジナヴィア・ロシア・アラスカ・カナダに分布し、とくにロシアのタイガは広大な天然林を形成している。マツ・トウヒ・モミなど、軟木の針葉樹が主体で、樹高のそろった樹木の純林をなしている場合が多く、大市場にも近いため、開発しやすい。その結果、世界で最も重要な林業地域をなし、針葉樹では、とくにロシア・カナダ・スウェーデン・アメリカ合衆国のアラスカなどの木材輸出量が多い。
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