最終更新日2024年4月28日
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地理の知識へのお誘い
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地理の学習室



使われている統計には古いものもあります。新しい統計を調べてみてください。

出てくる地名でわからないものは、かならず地図帳などで確認してみてください。




ブラジルやアンデス地方の農牧業

ブラジルの農業
 ブラジルでは、17世紀に北東部のレシフェからサルヴァドール、リオデジャネイロへと海岸にそってサトウキビが栽培され、また内陸に向かって畜産が広がった。18世紀に金が発見されると、畜産は内陸のマットグロッソ地方に拡大した。さらにさまざまな工芸作物は19世紀に現れ、アマゾン川流域でゴム栽培、北東部で綿花、サンパウロ周辺のテラローシャ地帯でコーヒーが栽培されるようになった。  20世紀になると、南部では、コーヒーの大農園(ファゼンダ)がパラナ州に広がった。これは、コロノ(注 4〜6年の開墾短期契約農民)が開墾したものである。コーヒー豆は手作業が中心で、生産量が天候に左右されるので、近年は、コーヒー畑がサトウキビや小麦畑に転換されている。それにともない、コロノが減少し、収穫期にやってくる日雇い移動農業労働者が増加している。
 また、北東部のサトウキビの大農園では、自給用作物をつくるためわずかな土地を借り、引き換えに地主の農場で、無給で働かされる例もみられる。一部の大農場では、サトウキビは刈り取られて直接工場に運ばれ、しぼられ、アルコールに加工されている。しぼりかすは燃料として火力発電に用いられる。しぼりかすは、余裕があれば、直営牧場の牛の飼料としても利用される。牛は、農場内のコロノの食料として消費されるものもある。
 ブラジル高原では、内陸でも交通条件が改善されたマットグロッソ地方に小麦や大豆の生産が広まり、元来、大農園であった規模を生かして、企業的農場経営が拡大している。そのため、東北部の貧しい農村から内陸の農村に向かう農業労働者と、農村から都市への第二次・第三次産業労働者の移動と、二重の人口移動がみられる。

アンデス地方の農牧業
 世界経済、とくにヨーロッパとアメリカ合衆国に対する農産物供給地として発達した大規模な企業的農牧業に対して、アンデス山地の高原では、インディオによる小規模な自給的農牧業がみられ、ジャガイモ・トウモロコシや麦類などの栽培と、リャマや羊の粗放的牧畜が中心となっている。また、熱帯雨林の広がるアマゾン盆地では、原始的な焼畑農業が主であり、世界市場との結びつきがほとんどない地域である。
 南アメリカは、ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシ、カボチャ、トマト、ピーマン、トウガラシ、ココア、落花生、パイナップル、コカ、タバコなどの原産地で、スペイン人が種や苗木を持って帰る約500年前まで、ヨーロッパやアジアにはこれらの農作物はなかった。
 豊富な農作物の種類は、アンデス山地における気候の高距変化に関係している。気温は高度100mで約0.6度下がるので、熱帯アンデスのエクアドルでは海岸に近い1000m以下の平地(チャラ)は年平均27度の熱帯気候、2000〜2300mの高地(ユンガ)までは年平均23度の亜熱帯、あるいは温帯気候、3200〜3500mまでの高原(ケチュア)は快適で冷涼な気候、4600〜5000mまではプーナと呼ばれる草原で寒冷地帯、それ以上はツンドラや氷雪の山地となる。
 この高距変化は、熱帯アンデスでも地域によって異なるので、ペルーではやや高く、エクアドルではやや低い。高度の低い交通条件のよい地域では、バナナ、ココア、サトウキビなどのプランテーション農業が大規模に行われているが、その労働者はしばしば自給的農業も行う零細農民である。貨幣経済の浸透から、プランテーションで現金収入を得ると同時に、条件の悪い急傾斜地で伝統的な作物を栽培している。近年、農地改革によって不在地主のプランテーションの土地を、農業労働者が分割する事例もみられるようになった。

大学入試問題例
1 ブラジルには、少数の大地主が( )と呼ばれる大農園を経営する大土地所有制が今も残る。 ファゼンダ
2 マナオスは( )の集散地として発展した。 ゴム
3 ( )は19世紀末までブラジルの総輸出額の70%を占めており、現在も世界一の輸出国(2019年)だが、現在では総輸出額の数%を占めるにすぎない。 コーヒー(豆) (注 産業の多角化でほかの輸出品が増えた)
4 サトウキビによる燃料用エタノールの生産が実用化されている国は、サトウキビの生産量が世界第1位の( )(2019年)である。 ブラジル (注 世界生産量の38.6%(2019年))
5 コロンビアは原油や石炭の輸出が多く、同国の総輸出額中、( )は7.9%である(2020年)。 コーヒー豆
6 ペルーのキチュア(標高2,300〜3,500m)では(1)の栽培、スニ(標高3,500〜4000m)ではアンデス原産の(2)の栽培、プーナ(標高4,000m以上)ではアルパカや(3)の飼育が行われている。 1トウモロコシ 2ジャガイモ 3リャマ



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