その他の環境問題
自然は、それ自身調和のとれた、一つの生態系(エコシステム)として存在してきた。人類の生活が、採集・狩猟の段階、ないし原始的農耕にとどまっているあいだは、人間自身も自然の生態系の一員とみなしてよいほど、人為的な改変はわずかなものであった。しかし、人間が各種の近代的機械や化学物質を多用するようになった最近100年のあいだに、自然は急速にその姿を変えつつある。
人間が計画的に直接自然を改変する例としては、森林・草地の開墾のほかに、沼沢地の排水、海岸の干拓、灌漑と河川統御、都市域の拡大などがあげられる。これらの変化は、地表のある特定の範囲に集中し、しかも急激に行われる。これに対して、緩慢(かんまん)で広範囲にわたって行われるのが、大気や水の汚染である。
産業革命が最初に始まったイギリスの首都ロンドンでは、1952年にスモッグにより呼吸困難などの健康被害が多発した。1989年のエクソン・パルディス号によるアラスカ沖の原油流出事故では、北アメリカ西海岸が広く汚染された。2005年末に中国の石油化学工場の爆発で生じた松花江の汚染が、下流の国ロシアのアムール川に及んだ。2010年4月にメキシコ湾で発生した石油採掘現場からの原油流出事故は、深刻な環境破壊を引き起こした。
日本の環境問題
人間の自然に対する改変は、人間社会に災害となって現れることがある。土壌侵食、地下水の過剰な汲(く)み上げによる地盤沈下、大雨による人工造成地の斜面崩壊、洪水など、身近に起こる災害などがこの例である。都市内部においても、建造物がふえ、舗装される部分が増加して、河川の流出率が大きくなり、雨水が短時間のうちに河川に流れ込むようになり、従来より洪水がふえる傾向にある。
千葉県の谷津(やつ)干潟では、埋め立てて高速道路を建設する計画があったが、住民などの反対運動により撤回された。また、沖縄県の石垣島では、白保地区の新空港建設計画がアオサンゴなどの生態系への影響が懸念され、自然保護の観点から撤回されたが、現在は計画を変更したうえで建設が進んでいる。環境の生態系は、人口の増加・技術の発達とともにたえず変化しつつある。したがって、われわれは、生態系のバランスに十分留意しながら開発を進め、自然環境の保全につとめる必要がある。
インドと中国では、工場などからの煤煙(ばいえん)や自動車からの排ガスによる大気汚染が問題となっている。原因物質の一つであるPM2.5は、季節によって広がりに違いがある。近年、日本ではユーラシア大陸から飛来するPM2.5が問題となっており、国際的対応が求められている。このように、原因となる物質が複数の国にまたがって拡大していく環境問題の例としては、「海洋ごみの漂着」があげられる。
大学入試問題例
1 ポリ塩化ビニルを燃やしたときに発生する( )には発がん性があるとされる(専修大 改)。 ダイオキシン
2 生態系の中に過剰に蓄積された(1)などは、土壌・地下水・河川などを経て海へと流出するが、その過程で湖沼や海域の(2)化や低層の貧酸素化をもたらし、生物多様性に重大な影響を与える(慶應義塾大 改)。 1窒素 2富栄養
3 ( )海沿岸地域の洪水対策と干拓事業のため、1997年に潮受け堤防が閉じられ、水質悪化などの問題で沿岸漁民と国が争った(駒澤大 改)。 有明
4 香川県の( )島には、大量の産業廃棄物が運び込まれ、それに対して島側が裁判を起こしたが、2000年に調停が成立し、現在は県による廃棄物処理が進められている(駒澤大 改)。 豊(て)
5 群馬・福島・新潟にまたがる( )は、本州では最大規模の高層湿原であるが、ここでの開発反対運動は日本の自然保護運動の原点といわれている(東京経済大 改)。 尾瀬(尾瀬ヶ原・尾瀬沼) (注 シカによる食害や踏み荒らしも問題となる)
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